「行って参ります。義母様」

いつものように扉の前で振り返り、

目の前の人物に挨拶をした。

「久遠（ｸｵﾝ）。ほかの方々に迷惑がかかるようなことはしないで下さいね」

静かな眼差しを私に向けて言った。

その表情は、いつも通り無表情。

まぁ、無理もないか。

まだ私を預かって一ヶ月も経ってないし・・・

それに、義母様はまだ若いし独り身だし。

私は聖　久遠（ﾋｼﾞﾘ　ｸｵﾝ）。

一ヶ月前、両親をいっぺんに亡くして、

唯一の血縁・聖　綺羅（ﾋｼﾞﾘ　ｷﾗ）お義母様にお世話になってます。

今日から、近くにある学園に通うことになった。

保護者同伴が普通なんじゃないかと思ったんだけど、

義母様がおっしゃるには付いていかなくていいんだとか。

何でだかそこまで聞く勇気はなかったからそれ以上は知らないんだけどね。

それならそれでいいやっていう結論に至ったから気にしないことにした。

家を出てから約１０分。

「クリファトラス魔妖術学園」と書いてある門が見え、そちらに向けて足を進めた。

私が通うのは普通の学校ではない。

「魔妖術」というものを学ぶところ。

“魔術”と“妖術”が合わさったようなものって言えばわかるよね。

私は中に入って職員室を探した。

職員室は２階の奥にあり、そこの先生たちは親切に迎えてくれた。

学園長は多忙な為いらっしゃらないとのことだったけど、

既に手続きは済んでいるため、

それなら、と生徒会長のところへ連れていかれることとなった。

行く途中、何も話さないのも気まずかったので、この学園の生徒会長について聞くことにした。

「この学園の生徒会長ってどんな方なんですか？」

そう私が問うと、まるで聞かれることをわかっていたかのようにすらすらと話し始めた。

「朔望月　奈々（ｻｸﾎﾞｳﾂﾞｷ　ﾅﾅ）と言ってね。

それほど授業態度や成績がいいわけではないんだが、

リーダーシップに関してだけはとても優れているんだよ。

それにとてもいい奴だからな。すぐ馴染めるようにいろいろしてくれるぞ」

「いろいろ、ですか。

彼女は私より年上でしょう？どうするというのです？」

「あぁ、彼女は君と同い年だよ」

「・・・・は？」

私は耳を疑った。

私と同じ年ということは、学園を占める生徒会長は最高学年でない。

どういうこと・・・？

「この学園は殆ど年を関係なくしてるんだ。

上下関係はうちの学園に必要ないからね」

・・・訳ありらしい。

その先生が遠い目をしていることからわかった。

結構、あからさまに表情に出ている。

それ以上は深く追求しないことにした。

「さぁ、ここだ」

「生徒会室」と書いてある洒落た看板がのかかった扉があった。

心なしか、他の教室や職員室よりも豪華な気がする。

『コンコン』

ノックの音は軽かった。

扉は重い程頑丈ではないらしい。

見かけ倒しか・・・。

「ハァイ、どーぞー？」

かわいらしい声が扉越しに聞こえた。

いくらか、子供っぽいところがありそうだ。

『キィ―――』

「失礼する。奈々、今大丈夫か？」

「ぁー、真田先生ー。もぅ朝から仕事とか疲れたァ。

早く他の生徒会員揃えてょー」

ムッとした表情を浮かべて奥のデスクに座っていた子は席を立ってこちらに向かって歩いてきた。

っていうか、先生に対しても上下関係無しなんだ・・・。

「そう言ってくれるな。

だいたい会員は揃えようとしてもお前が合わないっていうからいないんだろうが」

「だって合わなかったら仕事になんないじゃん」

もっともなことを言われ、言葉が見つからなかった真田先生は、

それより、と付け足すように言った。

「気分転換ついでに、転入生連れてきたぞ」

「マジッ？！」

私は出てくるように先生に促された。

噂の同い年の生徒会長は私の予想通り、

童顔で、身長も高いというわけではなかった。

小動物系か・・・。

「めっちゃ可愛いじゃん！！

先生、どっから連れ込んできたのよ？」

連れ込まれてきてませんが。

「何言ってんだよバカ」

ぁー・・・。

どっちかっていうと私が邪魔者？

「ぁッ、申し遅れました∑

あたしは朔望月奈々。

ご存知の通り、この学園の生徒会長よ。

好きな言葉は天上天下唯我独尊ｗｗ」

・・・・∑ 意外と黒い。

成る程。リーダーシップが優れてるってのはこういうところがあるからなのかもしれない。

「私は聖久遠です」

そう言ってペコリと頭を下げた。

「・・・・久遠、ね。そう呼んでいい？」

「ハイ。お好きにどうぞ」

「あたしのことも奈々でいいから♪」

今の間は一体・・・。

「それじゃ、俺は職員室に戻るよ。

奈々、聖をよろしくな」

「お任せ下さいなァ☆」

奈々は先生にブイサインを出した。

ってか、授業出なくていいのか？

時間的に始まっててもおかしくないけど。

『バタン』

扉が閉じたところで奈々は私の方をじいっと見た。

私は展覧会の作品か・・・・・？

「ところで久遠。ものは相談なんだけどさ」

「ハイ、何でしょう？」

「生徒会副会長にならない？」

ニッコリと満面の笑みを浮かべて言った。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハアァ？？！∑」

「あら、いい反応」

いきなり何を言われるのかと思ったらとんでもないことだった。

転入初日から嵐の予感です。

《あとがき》

うっはー、意味不明（ｹﾗ／∑

ぁー、奈々と同じで申し遅れました（ぇぇ

神無月刹那です、ハイ。

『Black Heart』はまだプロローグしか書いていないというのに

Story，１で既にネタに詰まっているので

急遽『星たちの唄』を書きました。

ね、宵（ﾌﾙﾅ

なんかありがちなネタですが、これから少なくとも登場人物十一人は増える予定です。

その後気分でプラス十二人増やすかもしれないです。（多ッッ∑

それじゃあテスト勉強に戻ります（ﾊ